2012年6月22日金曜日

肥満のおはなしその4:肥満の正体は何なのか


ひまん、ひまん、ひまん。と3回繰り返してみよう…。
ちょっとはずかしくなるような…何故?
太っていることって…肥満って何なのでしょうか?!
肥満シリーズもその4です。




私個人が肥満に対して思うことがあります。
それは”肥満”が必ずしもその当人1人だけの問題ではないのだろうということ。
このことは食と健康に関する仕事をしながらいつも考えてきました。

肥満の社会的な要因は
モータリゼーションによる運動量の減少、
食が娯楽化することでの、栄養バランスの崩れ、
多様な食物が簡単に手に入る先進国の食卓、等々…理由を挙げればきりがありません。

英語だとobesity なんて呼ばれているのですけど、3人に1人が obesityのアメリカでは、肥満者を擁護する団体も存在します。
その名も全米肥満受容協会(NAAFA)。
http://www.naafaonline.com/dev2/
若干、空いた口が塞がらない…状態になりましたが、ここまで肥満者が増加したアメリカ社会にとってはあたりまえのことなのかもしれません。
3人に1人ですから。

こういった団体の存在を知ると、見た目が太っていることと、医学的な肥満、メタボ問題は分けて考えるべきなのかと迷うことがあります。

ただし、世界を俯瞰し食料の均衡と健康という観点からそれを見たとき、”肥満を解消する”ということはやはり社会にとって必要なことだと言えます。

先日、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)の研究チームが発表した論文があります。(以下、記事引用)

全ての国で肥満度指数(BMI)の分布が米国並みとなれば、人間のバイオマス(生物総量)は5800万トン増加する。平均的な体重の人数に換算すれば93500万人分だ。体重が増えれば、活動時も不活動時でも摂取する食物量は増える。
また、肥満の人々の過剰体重分の代謝に必要な食物エネルギー総量は、標準体重の1億人が養える量になるという。
=中略= 
 論文の共著者イアン・ロバーツ(Ian Roberts)氏はAFPの取材に、「人々が地球の将来を心配するとき、地球の人口や増加の現状はどうなっているのだろうと考え、貧しい国の人たちが子どもを産みすぎるせいだと、早急に思いがちだ。だが、食料を必要とする人の頭数だけを数え、生命を維持する肉体の質量に目をやらないのは間違っている」と語った。「体の質量で考えれば、富裕国の太った人たちにも責任があることがわかるはずだ。これはアフリカにおける家族計画の問題だけではない」

=中略=
さらに、富裕国の人々は必要以上に食べ物を消費することで、食物価格をつりあげていると、ロバーツ氏は指摘する。「豊かで太った人たちの国での過剰消費が、結局は貧しい国々を食料不足と貧しさに追いやっているのだ」 
 
太った人が増え続けると地球が食料危機に、英大研究(AFP=時事) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120620-00000025-jij_afp-int

論文の冒頭にあるように全ての国でアメリカ並に肥満が増えることは現実として起こらないでほしいですし、まさかそれはないだろうと思いたいのですが、
現実として肥満者の割合というのは飢餓人口をはるかに上回り、肥満人口は15億人、栄養不足人口は9億2500万人(World Disasters Reportより)と報告されています。

もはや肥満は
“地球温暖化”などとおなじように一つの”現象”として社会が作り出しているものなのかもしれません。そしてそれは世界の皆で解決していくべき問題であるということを私たちは早急に認識しなければならないのです。
これこそTFTの考える飢餓と肥満の同時解決。

他人事ではない気がした肥満の正体。
あなたにもできることがあるはずです。そのヒントは随時、このblogでメンバーがお届けしていきます。
まだまだお伝えしたいことがありますが、肥満のお話シリーズはこれにて一旦終わりにしたいと思います。

P•S
それにしたって、全米肥満受容協会ってすごいですね(汗


【管理栄養士 大野尚子】


2012年6月13日水曜日

VOGUE発!女性のボディイメージに変革の時がくる?!

肥満のお話もその3まで進みましたが、ここら辺で箸休めとしましょう。
今日は女性の皆さんに声を大にしてお伝えしたい内容です。

先月5/27の朝日新聞「天声人声」からキャッチしたVOGUEの
”THE HEALTH INITIATIVE"

                     



世界各国で『VOGUE(ヴォーグ)』を発行する

コンデナスト・パブリケーションズ社(本社・ニューヨーク)は、

5月3日、各国編集長19人の共同声明「ザ・ヘルス・イニシアティブ」を発表しました。

「美と健康とは不可分のものである」という信念のもと、

不健康なほどに痩せたモデルを見た読者が無理な

ダイエットをしたり、また、精神的にも身体的にも未成熟な
若いモデルの姿を「理想のボディ」と読者が誤解することが
ないように、ヴォーグは今後、摂食障害を抱えたモデルや
16歳未満のモデルを起用しないことを決めました。
誌面において健康的なボディ・イメージを促進するほか、
ファッションショウのバックステージや撮影の現場などでの
モデルの食環境などに関しても支援します。
引用:http://www.zaikei.co.jp/releases/45075/


TFT管理栄養士の私もこのプロジェクトには拍手をしたいですね〜
なぜかというと2010年(H22年)の国民健康栄養調査の記事が出た時に
こんなエントリーを残していました。
2012.2.1

以下、エントリ内容より。
=====================
今年は所得の話も入って注目ひいてますが、
それより20代女子の
状況がどうにも心配な感じ。
やせている人(BMI18.5以下)の割合は29%とこれまでで

一番高く、野菜の摂取量は218.7gと成人の年代別で一番少な
い。
「女子だもの、お野菜食べてます!」なんてのは妄想?
朝食もあい
変わらず30%近く食べてない。
それで食事の脂肪エネルギー比率
は28.9%。30%以上の人の割合は44.8%って、
どの年代
よりも高いです。
=====================
そう。そうだったの。
やせてるのに、食事のバランスが明らかにおかしかったのよ。
私たち、日本女子。

管理栄養士として若い世代の子に「便秘で…」という相談を受けますが、
食事内容を聞いた私の心の声が(そもそも食べてないデスケド…!!)なことがなんと多いことか!!もちろん、こういう場合は1日3回の食事の大切さを伝えます。
これについては時間栄養学のお話でも述べたところです。

しっかり食べての健康的なボディ。
そしてママになる身体です。
妊婦さんの過度の痩身傾向から小さく生まれてしまった赤ちゃんが、
メタボリックシンドロームになりやすいことはあまり知られていません。
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-06-002.html

未来の肥満を防ぐためにも、健康的で美しいボディイメージが世界に、そして日本に浸透していくことを願ってやみません。

【管理栄養士 大野尚子】

2012年6月6日水曜日

肥満のお話その3:子供の肥満と給食革命

肥満のお話シリーズも3回目。
そろそろ別の話題で箸休めが必要かしら…と思っていましたが、1日にロイターから出たニュースをみたらキーボードをを打つ手が止められず…



[ワシントン 1日 ロイター]
 米医学研究所(IOM)と米学術研究会議(NRC)は1日、子どもの肥満対策に関する報告書を発表し、連邦政府や州政府に対してジャンクフードやソフトドリンクへの課税などを提言した。報告書は「子どもの肥満は米国の健康に深刻な脅威を与えている」と指摘。連邦政府や地域が対策を取らない限り、問題は解決しないと警告しており、具体的な対策としてはジャンクフードなどへの課税のほか、課外プログラムでのテレビやゲームの制限、レストランのメニューにカロリー表示を載せることも求めている。
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-11299020090902



肥満のお話その1でふれましたが、アメリカは3人に1人が肥満。
子供の肥満問題も言うまでもありません。。。
ニュースの記事にもありますが、飲料メーカーやファーストフードのおまけ作戦など(名前は出してませんよw)、個人の意志に伴わない経済や社会環境がそうさせている部分も多いのが実情。ですから課税という策にたどりつくわけです。

そもそもアメリカの肥満対策は1977年、アメリカ 上院議員ジョージ・マクガバンがだした「マクガバンレポート」から始まります。アメリカ人の心臓病を防ぐためにはやはり食生活が大事だ。特に油を減らして穀類を増やす、どっちかというと日本人のような食生活をするのがいい…」こういった文章をだしてからヘルスプロモーションが一気にすすみはじめました。それから35年ですか…アメリカの肥満問題はかなり根深いものです。


でも子供達だってだまっていません。
2010年、シカゴの高校では生徒達が立ち上がって教育委員会に「給食を健康にして!」と直訴したことも。


給食革命といえばこちらも有名ですね。Jamie Oliver's Food Revolution
トマトとポテトがわからない子もいますよ。


日本の子供達はどうでしょうか?
まだまだアメリカと比べれば肥満とは無縁かもしれませんが、トマトとポテトをわからない 子は実はいるかもな〜(汗)というのがちょっとだけ心配なところだったりします。

食は小さな頃からの積み重ね。”食育だー!!!”と大声で叫ばなくとも、
大人が背中をちゃんと見せることで自然に気づいていってほしいものです。

【管理栄養士 大野尚子】